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大阪高等裁判所 昭和24年(ラ)68号 決定 1949年12月02日

抗告人

和田末市

浜中隆一

大島修

江村宗正

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

行政行爲は、司法裁判所の裁判と同じく、その何れもが、固有の執行力を有するものではない。許可権能の賦與、撤回、取消、会社解散命令のようなものにあつては、行爲自体によつて、すでに、國家意思は実現せられ、これがため、更に進んで何人かに対し強制を施す必要は少しもない。民事訴訟法上、給付の判決のみが執行力を有すると同じく、行政行爲においても、義務者に対し行爲、不行爲を命じた下命行爲のみが執行力を有すること勿論である。もつとも、民事訴訟法においては、判決、裁判がこのような狹義における執行力を有しなくても、その裁判にもとずいて強制を用いないで、その内容に適合した状態を実現し得る場合があつて、この場合にも、その状態の実現をもつて、執行と呼んでおる例が少くない。いわゆる廣義の執行力と称するものである。たとえば判決に基いて、戸籍簿への記載や或はその抹消、変更を所轄官廳に申請し(戸籍法六三條七三條七七條一一六條不動産登記法二七條)又執行の基本たる判決を取り消し又は執行不許を宣言した判決にもとずいて、執行機関に執行の停止、取消を求めるが如くである(民訴五五〇條)。これは判決の有する既判力、執行力、形成力の外に法律がある内容の判決があるという事実を、法律要件として、賦與したいわゆる判決の事実的効力(反射的効力)に外ならない。行政行爲にあつても、この種の反射的効力を有するものがあること勿論である。たとえば特許の登録特許権の不実施の場合の実施権の許與、その取消の場合の登録(特許法四一條)公賣処分による権利移轉の場合の嘱託登録の如くである。停止命令によつて停止し得る執行はかかる廣狹の意味における執行に限る。

行政行爲によつて発生した効力をことごとく停止せよというが如きは効力が発生しなかつたと同一の仮の地位を與えよというものであつて、仮処分のみがよくこれをなし得る。本件行政処分は以上何れの意味における執行力も有しない。抗告人の求めるが如き効力の停止を爲すには仮処分によるの外道はない。行政行爲においては許さないところである。それで民事訴訟法第四一四條第三八四條第九五條第八九條を適用して主文のとおり決定する。

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